ART IN TIME & STYLE MIDTOWN VOL.9
"西村 智弘企画 イクタスVOL.1"
千葉鉄也・榎本裕一
進化するグラデーション
西村智弘(美術評論家)
かつてゲーテは、色彩を「生成しつつあるもの、成長しつつあるもの、躍動しているもの、変転しうるもの」として捉えようとした。ゲーテの『色彩論』における色環は有名だが、グラデーションは色彩の本質的な部分に属しているといえるであろう。
グ ラデーションとは生成のプロセスである。色と色のあいだに境界は存在せず、細かく見ていっても無限の連続があるだけである。「赤」や「青」といった実体が あるわけではなく、そうした名称はあくまで暫定的なものであって、本来は言葉で限定することが出来ない。グラデーションは絶えざる変化の過程とともにあ り、固定されることからどこまでも逃れるものなのだ。
千葉鉄也と榎本裕一は、グラデーションのみによって作品を成立させている点で共通する。
千 葉はイリュージョンの問題にこだわっており、榎本は色彩にこだわっている。彼らは、そのこだわりをストイックなまでに推し進め、余分な要素をできるだけ排 除することで、作品はある純粋状態に到達している。しかしこの純粋さは、いわゆる絵画の純粋性とは異なる。むしろ彼らの作品は、各自のこだわりをどこまで も突き進めた結果、一般的な意味での絵画とは異なる別のもの、美術にとって未知の表現に向かっている。
